反復性肩関節脱臼
肩関節はその構造上脱臼を起こしやすい関節です。生まれつき肩がゆるいことにより亜脱臼して疼痛がでる場合もありますが、それとは異なり最初はスポーツ中など外傷性に脱臼がおこり、その後、繰り返し脱臼するようになることを反復性肩関節脱臼といいます。肩関節脱臼は整復されると疼痛もなくなり、治ったように思われることが多いですが、実際は肩の前方にある靭帯と関節唇から構成されている制御機構が壊れています。主にこの制御機構により肩が前方へでることを抑えているためこの部分が肩甲骨側の壁から剥がれてしまいそのまま緩むことで肩が繰り返し脱臼するようになります。
反復性肩関節脱臼にならないために最も重要なのは初回脱臼時の治療になります。肩を外旋位に固定することで、剥がれた部分が元の位置に近く戻されて、そこで癒着することにより2度目の脱臼を防止することができる可能性があります。脱臼整復後、すぐ動かし始めたり、三角巾等での固定(内旋位)で経過をみたりするとはがれた部分はそのままとなり、肩の動きや簡単な外力で繰り返し脱臼してしまうようになります。また、初回脱臼のあと、専門的な医療機関で外旋位での固定(専用の装具)での正しい治療をしても再脱臼する可能性はあります。2度目の脱臼をした場合は、普段は肩に問題がなくても前方の靭帯と関節唇は緩んでいることが考えられ、これを脱臼しないように治療するには手術を行う必要があります。
手術は、1cm弱の創を3ヶ所あけて肩関節鏡を用いて行います。肩甲骨の関節面の前方にアンカーをいれてアンカーについている糸を緩んだ靭帯部分と関節唇の剥がれた部分にかけて元の位置に固定します。
術後は4週間の装具の固定を行い、コンタクトスポーツの復帰、オーバーヘッド動作スポーツの復帰は5から6ヶ月かかります。鏡視下手術後の再脱臼率は5~10%ほどあります。