変形性膝関節症
変形性膝関節症は外傷性や加齢性に半月板が損傷し、軟骨も損傷し、削れ消失してくることで骨が刺激され骨軟骨の破壊と増殖がおこり変形してくるものをいい、レントゲン写真で骨の変形がみられます。変形性膝関節症患者は推定3000万人いるとされ、発生頻度は年齢とともに増加し、50歳以降では女性で1.5~2倍男性より頻度が高くなります。60歳代女性の40%、70歳代女性の70%にみられるとされています。膝の痛みがでたとき、その疼痛が半月板の損傷のみによるものなのか、骨軟骨にまでおよんでいる変形性変化によるものなのか診断してもらうのが治療の選択には大切です。治療には保存治療と手術治療があります。保存治療には薬の内服、リハビリテーション、足底板装着、関節注射などがありますが、ここでは手術治療について説明します。
手術方法
半月板の損傷のみが傷みの主であると判断した場合は、半月板損傷の項で説明したように関節鏡というカメラを用いて傷んだ半月板の処置をします。骨軟骨が傷んでいるいわゆる変形性膝関節症と診断した場合その程度にもよりますが、半月板の処置では疼痛は改善されません。むしろ切除した場合はその後さらに骨軟骨損傷がすすみ疼痛は悪化する可能性すらあります。 変形性膝関節症の手術には骨切り術と人工関節置換術があります。
骨切り術について
骨切り術にはその変形の形態と度合により種類があります。骨切り術は矯正の手術になります。体重の荷重がかかる位置を変えることで内側か外側がどちらかが悪い膝に対して内側が悪い場合はO脚を矯正し、外側が悪い場合はX脚を矯正します。代表的なものは高位脛骨骨切り術といい膝の内側の変形、つまりO脚で外側は比較的傷んでいない患者さんに行います。変形が強い患者さんには大腿骨遠位骨切りと高位脛骨骨切り術を両方行うことで矯正します。外側が悪い膝には大腿骨遠位骨切りで矯正します。適応は内外側の片方が悪く比較的変形性変化が少ない動きのいい膝になりますが、変形が強くて多少適応をはずれても年齢の若い患者さん(50代、60代)には骨きり術を選択することが多くなります。70代、80代の患者さんも適応であれば骨切り術を選択します。骨きり術時は関節鏡も同時に行います。骨切りして矯正後は専用のプレートを用いて固定をします。最近は従来の高位脛骨骨切り術の場合、矯正することで膝蓋骨の位置がさがり、膝蓋骨と大腿骨の間の関節を悪くしてしまうことが示唆され、3次元的に膝蓋骨に影響を与えない手術法が考案されて当院でもいち早く対応しその方法を用いています。術後は早期に膝を動かすためギブスなどの固定はありません。荷重は松葉杖を用い段階的に行っていきます。骨切り術は膝の動きは悪くならず、足をまっすぐに矯正でき自分の膝を温存して疼痛を改善し、また、今後の変形性変化の進行も予防できます。骨切り術で対応できない膝もありその場合は人工膝関節置換術を行います。
人工膝関節置換術について
膝が変形し、痛みと動きの制限がでている高齢の患者さんや関節リウマチの患者さんには人工膝関節置換術をおこないます。高齢で変形が強い患者さんは人工膝関節置換術を選択することが多くなります。手術は膝を縦に15㎝ほど切開して、大腿骨、脛骨とも変形した表面の骨を切除して、軟骨部分と同じ形をした人工物を挿入します。人工物には神経がありませんので人工物同士が接触しても疼痛は感じることなく歩行時痛は改善します。手術後2日目から動かしはじめ、4日目ぐらいから歩行訓練を開始します。人工関節はもともと膝の動きがいい患者さんには動きが悪くなる可能性があります。また、関節内に人工物を入れるため、術後感染を起こすと治療に難渋することがあります。手術は一般的に広く行われており、重度の変形にも対応することが可能です。