肩腱板断裂
転倒などで肩を打撲したり、手をついたりした時など外傷性に起こる場合と日常動作や労働、スポーツによる動作の繰り返しで自然に起こる場合があります。前者の場合は原因がはっきりしており、病院を受診することで早めに診断されることが多いですが、後者の場合は原因がわからず、急に痛みが生じたり、徐々に痛みを感じるようになったりするので五十肩と思い放置したり、治療されたりすることが多くなります。腱板断裂の患者数は自覚症状のない人も含め600万人と推定され、治療をうけた患者はそのうち6万人にすぎません。断裂した腱板は自然に修復されることはなく、断裂部は時間の経過で大きくなっていくことがわかっています。腱板が断裂していると肩を水平に挙げたまま持続するのに疼痛を感じたり、力が入りにくく困難になったりすることが多いですが、他の筋肉等を使ってバランスよく肩を使えれば、疼痛も緩和し保存加療でよくなることもあります。
腱板は肩の腕の骨をとりかこむようにある肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋で構成されたインナーマッスルというバランスをとるための筋肉が腱状となったもので腕の骨についています。肩を動かしたときに腕の骨(球状)を肩甲骨の受け皿の中心にのせておくためにバランスをとって働きます(剣玉の玉を受け皿にのせたままにするためのようなものです)。これが断裂すると球状の腕の骨が受け皿の上で安定しなくなり、疼痛や肩が挙がらないなどの症状がでます。疼痛が続く場合は手術を行います。また、大きな腱板断裂は放っておくと広範囲断裂になり手術で修復することが困難になります。当院では関節鏡を用いて、1cm弱の傷を約5から6ヶ所あけて、侵襲の少ない手術を行っています。術後は5から7週間の肩の外転挙上位での固定を行い、動作が普通に行えるのに3ヶ月ほどかかります。手術では断裂が大きく、時間が経ちすぎて元に戻せないものや、腱の質が悪く再断裂を起こす(画像上は10から30%)可能性がありますが、腱板の修復ができれば疼痛は改善し、肩関節の機能も改善します。